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ジャックは軽快に話すマリーをじっと見ていた。
失踪する前でも綺麗な顔立ちで格好良かったが、成長した彼はそれに加えとても逞しくなっていた。
恐らく自分が男性の時よりも、しっかりした体つきだろう。
背が高く綺麗な顔立ちで、おまけに人当たりの良いマリー。
ジャックは急に不安になると同時に、とても申し訳ない気持ちになった。
自分は船長としてやっていけないんじゃないか? そもそも軟弱な女が船長だなんて、クルー達は受け入れてくれないのでは?
そう思うと無性に悲しくなってきた。
「うぅ……ふぇっ」
「ま、マリー!? どうしたの、泣かないでよ!」
いきなり泣き出したジャックに、マリーは酷く困惑していた。
どこか痛むのかなど、マリーは見当違いの事を聞いてくる。
ジャックはそのどれでもないと、ふるふると首を横に振った。
マスケット達も心配そうにジャックを覗き込んでくる。
“船長”と話し掛けられる度に、胸が苦しくなった。
「わたしっ、船長のままで、良いの? こんな女が、船長なんてっやってて、良いのっ?」
しゃくりあげながら気持ちを吐露するジャック。
その姿は、折れた生花のように儚く可憐だった。
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