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「やっぱり、みんなここに居たのね。起きたら居なくて、探したのよ?」
鈴を転がしたような美しい声がしたので振り向けば、よたよたと甲板に上がってくるジャックの姿があった。
怪我で痛むであろう体を引きずり、懸命に歩いてくる姿は、男でなくとも守りたくなるほどいじらしい。
案の定マリーがいち早く駆け寄り、その細い体を支える。
すかさず抱え上げてしまうあたり、やはり情熱的な愛を持つ恋人である。
「あのねジャック、私歩けるから大丈夫よ?」
「ダメ、君の大丈夫は信用出来ない。外に出たいなら、僕が抱っこしてあげるから」
「嬉しいお誘いなんだけどね、だったらその――お尻撫でるのやめてくれないかしら……」
少し低い声でジャックが不満を漏らす。
そう、マリーはどさくさに紛れてジャックの尻を撫でていたのだ。
不快感にジャックがマリーの頬をつねるが、それでも彼はめげない。
「だってぇ、マリーのお尻気持ち良いんだもん。まあもっとも、マリーの体だったら僕はどの部分でも満足出来――」「いい加減にしてちょうだい! この変態!」
怪我人とは思えない力でジャックはマリーの頭を殴る。
痛みに顔を歪めるマリーの頭には、立派なコブが出来上がっていた。
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