裏切りは僕の名前を知っている1

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『愁生!ちゃんと食え!』 毎朝聞かされる、お決まりのセリフ。 だけど食欲がないんだ。 『わかったよ』 そう返事をするものの、結局はクラスメイトにあげてしまう。 今日もアイツは来た。 「愁生!ちゃんと食え!」 またあのお決まりのセリフ…。 もう何度目だよ…? 「わかったよ。というか、いつも言ってるけど、ここ二年の教室だよ?」 焔椎真は年が一つ下だ。なのに平気で毎日二年の教室に入ってくる。…怖いもの知らずというか、馬鹿というか…。 「わかってるよ。てか俺知ってんだぞ!結局食ってねーこと!」 バレてた…。 ビシッと指を指してくる焔椎真が幼く見えて、急に笑いが込み上げてくる。 「何笑ってんだよ…!?」 「いや、なんでもない」 「そうか…?あ、今日はお前が食べるまでここに居座ってやるからな!」 めんどくさいことになった…。 意地でも食べさせようとするなんて…。 タイミング良くチャイムが鳴った。 焔椎真は焦って教室を出る。 「愁生!絶対食えよ!?」 そう言い残して自分の教室に帰って行った。 「ねぇ、お腹すいてない?これもらってほしいんだけど」 「いいのか!?あ…でも、『絶対食え』って…」 「大丈夫だよ」 今日も結局人にあげてしまう。 俺がご飯を食べないのには二つ理由がある。 一つ目は風紀委員の仕事が朝早くからあるから。 二つ目はただ単に食欲がないから、である。 確かに食事を摂るのは大事だと自覚はしている。 ツヴァイルトが充分に力を発揮するには、食事のようにエネルギーの補給が大切だ。 でも、食べなくても俺は充分に発揮できていると思う。 食べないことに不便さは感じてないし、最終的にいつも食べなくなってしまう。 しかし、最近痩せてきた。 元々が太ってたわけではなく、元から標準より少し痩せ型だった。 更に痩せたとなると、そろそろヤバいかもしれない。 焔椎真はそこまで深く考えていないのだろうけどね…。 □ 放課後 「愁生!帰るぞ!」 「今日は委員会だ。先に帰ってろ」 焔椎真は「仕方ねーか」と言って背を向けた。 黄昏館に帰り、扉を開けると夕月が出迎えてくれた。 「おかえりなさい、愁生君」 「ただいま、夕月」 後ろの方で焔椎真がムスッとしてるけど、きっと俺が夕月と話してるからだな。 アイツは少なからず夕月に想いを寄せているんだ。 俺じゃなくて…夕月に…。
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