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「愁生さん、晩御飯は…」
「いらな…」
「愁生!」
黄昏館のコックの遠間さんが一応気を使ってくれてる。
焔椎真がすかさず割り込んで来るけど、気にしない。
部屋に入ろうと、その場から立ち去ろうとすると、焔椎真に腕を掴まれた。
「何?」
「お前最近痩せてきただろ…」
「ん?変わらないと思うけど…」
知らないフリをしてみる。
でも通用しない…。
「俺はお前が心配なんだ…!死んじまったらどうしようって…」
「俺を殺すな」
「お前に死なれたら…俺は生きていけねーよ…」
「人の話聞いてる…?」
腕を掴む焔椎真の力が強くなった。
転生の術を施されていない今、死んでしまうと来世で巡り会えなくなってしまう。
パートナーである焔椎真と離れるのは嫌だ。
昔、今の焔椎真みたいに焔椎真の腕を掴んだことがあった。
焔椎真は自殺しようとしたんだ。…自分の持つ『神の声』で…。
それを止めた時、俺は「おれ達もう二度と巡り合えないんだぞ…っ生まれかわっても!!それでも消えたいってならおれも連れていけ…!!置いていくな、おまえのいない世界なんかに」って確かに言った。
それで今も残る火傷を負った。
この火傷はずっと自分と焔椎真との絆の証だと思ってた…。
忘れてはいけないあの時の気持ち…。
俺は忘れていたのかもしれない…。
いや、忘れていなかったとしてもどっちみち俺の絶食には関係ない。
「まだ償いきれてないんだ…!お前に消えない傷を負わせた罪の…」
「じゃあ償いきれたら死んでもいいの?」
「俺が償いきれるわけがないけど、もしお前が本当にそういうことを考えてるなら…俺は償わない。お前を死なせない…!」
一回オーパストに殺されたけどね、俺。
まぁその時は焔椎真の『神の声』で生き返ったけど…。
…もしかして、俺は死んでも焔椎真が生きてる限り生き返れるのか…?
「ありがとう…。でも今日は休ませてくれないか?疲れちゃった」
笑顔を見せて、焔椎真の腕を掴む力が弱まるのを見計らい振りほどいて部屋に帰った。
風呂に入ってよく考えてみる…。
明日はちゃんと食べないとな…。
今日一日何も食べてない。
多少は胃に入れておかないと、本当に死んでしまうかもしれないな。
今日のところはゆっくり休んで明日に備えよう…。特に何があるわけではないけれど。
風呂から上がり再び部屋に帰って床についた。
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