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まるでバケツをひっくり返したかと思うほどの土砂降りに、木が薙ぎ倒されそうな強風。
まさに、嵐の夜だった。
そんな暗い森の中、彼女は走っていた。
「ハァ、ハァ……」
こんなに走ることなど、体育の授業でもそうない。
大量の雨を吸ったせいで重くなった制服を忌ま忌ましく思う暇もなく、彼女は先の見えない暗闇を走っていく。
厚い雲に覆われた空からはゴロゴロと不吉な音も響き、寒さとはまた違う震えがおきた。
「あっ……!?」
さすがに、もう疲れた。
そう思った瞬間重い足が絡まり、ぬかるんだ地面に倒れ込む。
その際に口の中に土が入ってきてジャリジャリしたが、気にする余裕などなかった。
こんな所で止まっていると、追い付かれてしまう。
彼女は疲れて休みたいと訴える自身の体を奮い立たせ、ヨロヨロと立ち上がる。
しかしいざ走り出そうとすれば、足に鋭い痛みを感じた。
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