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後ろに振り返ると、取り巻きたちがズボンのベルトを外していた。
「お前ら、何やってんの?」
烈は彼らを、可哀想な人を見る目で見つめた。
「その子可愛いじゃないすか!今からヤりましょうよ!烈さん!」
……信じられない一言だった。
今まで、こいつらと一緒に番長グループを締めたりしては来たが、彼らが女性に対してこんなことをしようとするのは信じられなかった。
烈は決心した。ここで自分は彼らを裏切ると……。
なぜだろう。彼女のあの美しい身体を見ていると、あれを汚そうとする輩を問答無用、情け無用であの世に送り出したくなる。これが俗に言う一目惚れなのだろうか……。
その時、電気屋のテレビでやっているアニメのオープニングテーマが流れていた。
裏切り者の、名を受けて♪総てを捨てて、戦う男♪
まさに今の状態に相応しかった。
烈は近くに落ちていたスパナを右手に、名状しがたくはないバールのようなものを左手に持ち、適当に振り回しながら取り巻きたちを威嚇する。
「失せろ!この子に手を出すな!」
工具を振り回す姿はとてもヒーローとは言いがたいが、なんとなく決まっていた。
中途半端ではあるが、さすがに武装した現番長を相手にはできないと悟ったのだろう。連中は退散した。
しかし、この子を道端に捨てていくわけにも行かない。どうすればいいのか……。
「家に連れていくか……」
何故その考えに至ったかは分からない。
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