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烈の家はアパートだ。両親は特撮ヒーローの仕事をしており、都会から離れられない。ちなみに母はカメラ、父はスーツアクターをしている。そんな体力溢れる父により、変な格闘技の指導を受けていたことはとても恥ずかしい。
父がよく言った言葉がある。
『烈、よく聞け。この地球にはいつか我々の敵、悪の使者がやってくる。だからお前はヒーローになりなさい。俺たちとは違う、夢を与えるのではなく、勇気と夢を守る本物のヒーローに……』
今思えば馬鹿馬鹿しい。悪の使者なんか来ない。自分がヒーローになるのもおかしな話だ。
「……なぁ、お前」
女性的で無愛想で威圧的な声がした。
「そう、お前だ。俺をここまでつれてきてくれたようだな」
どうやら先ほどの少女が起きたらしい。初対面の人に向かってお前というのも失礼なのだが、一人称が俺というのはどういうことだ……?
「なぁ、君女の子だよね?」
「いかにも、俺様は正真正銘のおなごだが、何故そんな質問を?」
言いたいこと、伝わらなかったんだ……。
「いやぁ、しゃべり方が」
「ああ、これはちょっとした癖だ。忘れろ」
「はぁ……」
意味の分からない人だ。さばさばした雰囲気があるが、なんだか新鮮な感じがする。
「それはそうとお前に聞きたいことがある」
烈は息を飲んだ……。
「俺を欲しくはないか……?」
この少女は、大真面目な顔で不真面目な一言をいい放った。
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