地球が静止する日

4/10
前へ
/157ページ
次へ
 烈の家はアパートだ。両親は特撮ヒーローの仕事をしており、都会から離れられない。ちなみに母はカメラ、父はスーツアクターをしている。そんな体力溢れる父により、変な格闘技の指導を受けていたことはとても恥ずかしい。  父がよく言った言葉がある。 『烈、よく聞け。この地球にはいつか我々の敵、悪の使者がやってくる。だからお前はヒーローになりなさい。俺たちとは違う、夢を与えるのではなく、勇気と夢を守る本物のヒーローに……』  今思えば馬鹿馬鹿しい。悪の使者なんか来ない。自分がヒーローになるのもおかしな話だ。 「……なぁ、お前」  女性的で無愛想で威圧的な声がした。 「そう、お前だ。俺をここまでつれてきてくれたようだな」  どうやら先ほどの少女が起きたらしい。初対面の人に向かってお前というのも失礼なのだが、一人称が俺というのはどういうことだ……? 「なぁ、君女の子だよね?」 「いかにも、俺様は正真正銘のおなごだが、何故そんな質問を?」  言いたいこと、伝わらなかったんだ……。 「いやぁ、しゃべり方が」 「ああ、これはちょっとした癖だ。忘れろ」 「はぁ……」  意味の分からない人だ。さばさばした雰囲気があるが、なんだか新鮮な感じがする。 「それはそうとお前に聞きたいことがある」  烈は息を飲んだ……。 「俺を欲しくはないか……?」  この少女は、大真面目な顔で不真面目な一言をいい放った。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加