鼓動

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いつからか心のどこか奥底で突っかかるような気持ちがあった。 自分でも分からなかった。 時が流れるにつれて、それは徐々に形作る。 この気持ちが確信に触れると、 次は欲が溢れ出す――― すこしでも俺に対して好意を持ってほしい。 今では、感触を楽しめそうな唇、あどけない笑顔さえも欲しくなる――――― すでに井本は体に力が入らないらしく、壁にもたれかかっている。 久しぶりに酩酊しているのを見た。 このくらい酔うと面倒なときがある。 そう思った矢先、先輩が心配して井本の肩に置いていた手を払った。 先輩を横目で見る。 「だるいから、触わんな!」 唐突に出た言葉に、周りが静かになった。 なにやっとんねん 反射的に体が動いた。 これ以上ここにいたら迷惑かかるなと、急いで井本を立たせて、先輩に謝罪をし、家に帰ることを伝えた。 その後、タクシーを拾い、乗り込んだ。 隣に座る井本は後部座席に委ねたまま、眠っている。 タクシーは井本の家へと走った。
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