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横浜の中華街近くに、とある老夫婦が住んでいました。
お爺さんは寝たきりで、お婆さんも眼が見えません。一人息子もすでに独立していて、お婆さんは、眼が見えないながらも、一生懸命お爺さんの介護をしていました。
そんなある日、お爺さんが不意に、シュウマイが食いたい、シュウマイが食いたいと、うわごとのように言うようになりました。お爺さんももう自分の死期を悟ったのでしょう、死ぬ前にまたシュウマイが食いたい、とお婆さんに頼みました。
お婆さんは解った、解ったと言って、見えない眼で苦労しながらも、中華街に行き、お爺さんの好きだった某有名店のシュウマイを買いました。
そして家に帰り、厚紙の箱からシュウマイを出して、お爺さんに食べさせてあげました。
お爺さんは、美味い、美味いと、二十個入りのシュウマイを全て食べてしまいました。
その日以来、お爺さんは毎日のようにお婆さんにシュウマイを頼むようになり、それにお婆さんも喜んで買いに行きました。
そしてある日。
お婆さんがいつものようにシュウマイを箱から出していると、不思議な事に気が付きました。
―― おや、十九個しかない?
シュウマイが一つ足りません。
おかしいな……。と思い、手探りで周りを探しても、落ちている様子もありませんでした。
しかしその時はまだ、お婆さんも、きっと店の人が入れ忘れたのだろう……。と思い、気にも留めませんでした。
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