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ここはとある世界。
日本でも無く、外国でも無く、地球でも無いどこか違う世界。
そのとある世界で今、一人の男性が地に立っていた。
その場所は多種の花が咲き誇る広大な野原。
その野原に佇むその男性……容姿は全身を包む漆黒のローブで判明しない。唯一分かるのは、身長位だろうか。
大体、一般男性の平均身長。
「ここに居ましたか」
ふと、その男性に話しかけてきたのは、一人の女性。男性は女性の声がする方へと振り向くと、ようやく顔に掛かるローブを後ろに払い素顔を見せた。
その素顔は、無機質な紅瞳で全てを見通し、肌は綺麗で出来物一つない。微妙に幼さが残る顔立ちだが、紅瞳がその幼さを消し去り畏怖へと移行させていた。
髪は無造作に整っており、美しい黒髪をしていた。
対して女性は普通の、黒髪黒瞳で装飾された洋服を着込んでいる。男性とは一定の距離を保ち、決してその距離を縮めようとはしない。
二人はそのまま移動を開始し、花の咲き誇る野原を後にした。
女性は男性をある城の、一室へと案内した後にそさくさと立ち去ってしまった。だが男性は女性が立ち去ったのを見向きもせず、一室の扉を開けて入っていく。
「……解」
男性がそう呟くと、一室の風景が歪み始める。普通に本棚やクローゼットに机などが配置されていたが、歪んだ風景が元に戻ったとき…地下へと続く石造りの階段が現れていた。
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