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姉さんが家から連れ出してくれた時、本当に嬉しかった。
今思えばあの家には人なんて住んでなかったのかもしれない。
毎日のように浴びせられる汚い言葉の数々を幼心に覚えている。
しかし、幼い頃の俺にはその言葉の意味は分からず、〝どなってるからおこられてる〟程度にしか考えていなかった。
〝屑〟や〝ゴミ〟の意味さえ知らなかった俺でも理解出来たのは、殴りと蹴りの痛さ。
だからと言ってどうするわけでもない。
狭く臭く暗く寒いアパートだけが俺の世界だったから、父が狂っているんだと気付きもしなかった。
人が怒る理由について考えるような歳でもなかったし…。
〝このおとこがぼくにいたいことをするのはあたりまえなんだ〟
それが全てだった。
そんな俺の全ては、アパートのドアと共に姉さんによって壊された。
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