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一目惚れなんて、それまでしたことがなかった。
と、いうよりも、自分から誰かを好きになることなんてなかった。
そんな自分が、まさかこんなに一瞬で人を好きになるなんて!
しかも、こんな風になるなんて思ってもいなかった。
猛烈なアタックの嵐。
喫茶店のバイトは、吉田さんと香と赤井君の3人体制だったけど、ぶっちゃけお客さんなんてほとんど来ないのだ。
常連さんが数人いるくらい。
下手すれば、お客さんが3人しか来ないなんて日もザラだ。
平均的にみても、全く忙しい店ではない。
だから、営業中とはいえど店員同士で座って喋る時間が多い。
香は、常に赤井くんの側にいて話しかけた。
彼は笑顔で答えてくれて、その笑顔を見るたびに
♪き~み~に む~ぅね キュン!
していた。
時々、吉田さんがヤキモチを妬いて邪魔をしてきたけど、そんなのにはおかまいなしに赤井くんに張り付いていた。
そのうち、休みの日に何度か2人で遊んだりするようになって、どんどん距離を縮めていった。
わかりやすいほど、わかりやすく香は好き好きオーラを発していた。
だが。
3ヶ月を過ぎても彼は一向に告白してくれない。
雰囲気は、もう付き合ってるんじゃないかと思うくらいなはずなのに。
待っていたけど、特に進展もない状況に香は痺れを切らして伝えた。
「私、寛太郎のこと好きなんだけど……」
彼は驚いて知らなかったと言った。
どんだけ鈍いんだと思いながらも、付き合いたいと伝える香に彼は満面の笑みで答えてくれた。
そして香は今、春風のように掴みどころのない寛太郎の彼女になっている。
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