第1話 出会いは春風に乗ってやってくる!

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彼女になったとはいえ、何かが変わったかというと何も変わらなかった。 バイトは7時に終わる。 結構早い時間に終わるわけだ。 23歳の香と26歳の寛太郎。 若い2人だから、当然バイト後に遊びに行っちゃったりすると思うところなのだが、どうもそうじゃない。 寛太郎は、バイトが終わるとそのまま帰ってしまう。 ご飯でも行こうって誘っても、行くところがあるって断られてしまうのだ。 バイトのない日もそう。 だいたい遅くても8時くらいにはバイバイしている。 香は不安だった。 だってそうでしょ? イケメンで好青年の寛太郎。 モテるはずだもん。 浮気してるんじゃないかしら?? 不安で不安で仕方がなかった香は、ある日意を決して寛太郎を問い詰めた。 「いつもどこにいってるの?浮気してるんじゃないの?」 営業中の店内に、香の声はよく響いていた。 常連のおじちゃんが驚いてスプーンを落とした。 「ちょっと香ちゃん!!何してんの?!加賀谷さん、ごめんね~。」 慌てたように、真っ赤な口紅の吉田さんが常連さんに謝って、香を裏に引っ張った。 それに寛太郎も続いた。 「何があったんだか知らないけどさ~、お客さんいるときにやめなさいよ。」 前歯に口紅をつけた吉田さんは呆れたように言うと、香たちを残して店頭に戻って行った。 寛太郎がオドオドしながら香を見ている。 「そんな風に思わせてたんだね……ごめんね、心配させて……。  今日、仕事終わったら香も一緒に行こう?」 香はとりあえず頷いて、目も合わさないで店頭に戻った。 ソバージュヘアーの吉田さんが、常連の加賀谷さんと楽しそうに話していた。 下世話な話で盛り上がってる。 いつものことだけど、この日はそれが苦痛でしかたなかった。
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