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仕事が終わると、寛太郎がいつもの人懐っこい笑顔で香を見た。
これから1人でホストクラブに行くの!!と、意気込んでいる吉田さんと店の前で別れると、寛太郎が自然と香の手を取って歩き出した。
何も話さないけど、繋いだ手が何だか幸せだった。
そのままバスに乗り、吉川町に降り立った。
「ここだよ。」
少し歩いて連れて来られたのは、一軒のスナックだった。
……爽やか好青年のイケメンと、ミスマッチな場所。
入り口付近に『和子』と書かれている。
よくわからないでいる香を気にも留めず、寛太郎は店のドアを開けた。
「いらっしゃい。」
外観はとても小さいような気がしたが、中に入ってみると程よい広さに感じた。
カウンターの中に、和服がよく似合う女性が立っていた。
50歳くらいだろうか。
落ち着いた雰囲気の、綺麗な人だ。
寛太郎が挨拶をして、カウンター席に座った。
香も真似して隣に座る。
ママが寛太郎と仲良さ気に話しながら、香に目を向けて微笑んだ。
「可愛らしい娘さんじゃないの。はじめまして。ママの和子です。」
寛太郎が香のことを彼女だと紹介してくれた。
場所も場所なので、バイト先の喫茶店くらいここも流行っていないらしい。
お客さんも常連さんらしいおじさんが2人いるだけ。
そして、その2人とも寛太郎は顔見知りのようで親しげに話していた。
とりあえずお酒を頼み、寛太郎たちが話している横でボォーッとしていた。
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