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こんなところに寛太郎は通っていたのかとわかった途端、香は拍子抜けしてしまった。
26歳の男がスナック通い。
それも若い女の子もいない、50歳くらいのママが1人でやっているような店だ。
ここに来る事の方が、香と過ごす時間より彼にとっては優先事項だったんだと思うと、香はなんだか情けなかった。
ちびちびとお酒を飲みながら、店内を眺める。
ありきたりなスナックだ。
カウンターの壁にはズラリとお酒が並べられている。
大して広くもない店内はカウンター8席、その後ろに壁と一体になったソファー。
そこに四角いテーブルが2つ置いてある。
それでも、やっぱりそこも8人くらいが座れる程度だろうか。
計16席の店。
だけど、今店にいる人間はみんなカウンターにいた。
本当に常連さんばかりといった感じがする。
暗めの照明の中で、嫌味なほどテレビの画面が光を放っていた。
カラオケ用のテレビ。
曲のタイトルがスクロールしていた。
お通しに出された松前漬けに箸をつける。
店内の“いかにも”な雰囲気にピッタリのお通しだな、なんて思いながら食べた松前漬け。
これが意外なほど美味しかった。
思わず香は「美味しい。」と口に出していた。
話していた寛太郎たちが話をやめて香を見た。
和子さんが嬉しそうに「あれ!口にあったのね。よかったわ~!」と、笑った。
その時、すごく懐かしい気分になって心がホッコリするのを感じたことに香は戸惑っていた。
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