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花火がビルの間から、ときどき見える。
去年までは、嫌がりながらも、母と父、三人で見に来てた。
しかし、今年からは、独りで見る事になった。
別に、それを本当に望んだ訳ではなかったのに。
足が勝手に進み、何かにとりつかれたようにある場所へと向かう
私はこの一年、泣いた事は一度もなかった。
泣きたくなかったんだ。
何かに負けるような気がして…。
気がつくと、目の前には
神社があった。
そこは、古くも、新しくも見える知らない神社だったが
どこか懐かしさがあった
私は、なんとも不思議な気持ちになり、足が棒になったように、ただ、呆然と空に打ち上げられた花火を見上げた。
夏、蝉の声が花火の音に掻き消された夜だった。
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