夏の夜

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それから、何時間たったのか分からない。 ぽつり と雨が降り出す 目の前に屋根があるのに入ろうという気には なれなかった。 靴の底がだんだん湿っぽさを増してきた。 じわりじわりと 何かを訴えるように。 雨は、土砂降りへと変わっていた 「おい。そんなところで、何してんだ?」 「…待ってるんです。」 「…誰を?」 「いない人をー…。」 自分でも、おかしい事を言ってると思った。 いない人を待ってるなんて、矛盾してる。 でも、その男の子は、真剣な眼差しで聴いてくれた。 その眼差しに捕らえられたかのように、気がつくと、今までの事を全て話していた。 両親が他界し、施設にいた事や花火大会の思い出 たくさんの話を何も言わず、ただ、聴いてくれてた。 それが私には、嬉しかった。
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