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夜の時間帯だ。
「はぁはぁ、もう…む゛り゛。」
カイはタイヤ引き15㎞を終え、ラ・テンシャの中でへばっていた。
マーシャ以外の達人たちは別の部屋にいる。
「今日は初めてということで、かる~く体をほぐす程度にしといたよ。」
マーシャは涼しい顔で言う。
(この人の常識、怖い。)
「今日は何もせず休みたまえ。明日、学校があるのだろうから。」
マーシャは疲れきったカイに言う。
(そうだ、明日学校だ。)
「明日は夕方の5時半にまた来なさい。」
(明日は疲れすぎたってことで、やすもうかな。)
「ちゃんと来るように。」
マーシャはカイに釘をさしといた。
「…。明日もあるので帰ります。」
図星だったので、一瞬動けなくなったが、カイはヨロヨロと立ち上がり、自分の家に帰っていった。
―――――――
マーシャは他の達人たちが集まっている部屋に入る。
「どうじゃ、カイくんの具合は。」
テムジンはマーシャに聞く。
「彼は……全くといっていいほど、才能が無いですね。」
「やっぱりのう。」
「………。」
レインは黙ったままだ。
「けっ。」
エトルは機嫌が悪い。
「ま、様子を見ることですね。」
「ほぉほぉほぉ、これからが楽しみじゃ。」
テムジンは楽しそうである。
「あれ、アムチャくんは?」
マーシャはテムジンに聞く。
「彼なら、外の隅っこで蟻の行列を見ておるわい。」
「彼は動物に優しいですからね。」
ラ・テンシャの中はカイが来たせいなのか、いつも以上ににぎやかであった。
(カイは武術の才能のカケラも無いが、目、鼻、耳は優れているな。)
マーシャは一人そう思った。
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