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「はあ?」
流石の俺も、すぐには少女の言った意味が理解できず。
どういう意味か聞こうとして、
、、、、、、、
少女の眼を見た。
「う、ぐ……………………」
瞬時に体が硬直し、指一本動かせないまま、夜露に濡れる草の上に倒れ伏す。
「お前は、一体……………」
唯一動く口で尋ねる。
「私か?最も簡単かつ要を得た表現をするならば、吸血鬼と言ったところか。」
「ふうん。それでその吸血鬼が俺に何の用だ?」
「………貴様、人間にしては冷静だな。大抵の者は恐怖と驚きで悲鳴ぐらいしかその口を出ないぞ?」
いや、驚いてはいるが。
眼が合っただけで金縛りにできる人間なんていないだろうし。
「そんな有象無象と俺を一緒にするなよ。
で?もう一度訊くが何の用だ?」
「ふむ。言わなかったか?
貴様の血を喰らい尽くす。
私は今非常に困っているが、貴様一人分の血を吸えばチカラも戻る。
いくら体がデカくとも狼では急場凌ぎにしかならん。やはりヒトの血が必要だ。
よいしょっと。お前見た目より重いな。細身の割りに筋肉質だ。」
俺は少女によってうつ伏せに倒れた状態から仰向けにされた。
それにしてもあの狼を殺ったのはこの少女か。哀れ。
「さてと、下らん問答は終いだ。
人間。ヒトとしての生を終えるにあたり、何か言い残す事はあるか?」
指一本動かせない状態で、少女の顔が近付いて来る。
あの狼同様、首から血を吸い尽くすつもりだろう。
人生最後かもしれない瞬間に、顔が近いな、と少し照れている俺は冷静を通り越してただの馬鹿かもしれないが。
「言い残す事ね。ただ一つだけある。」
「ほう?何だ?」
「たかが身動き一つ取れない程度で俺は生を諦めない。
〈アースニードル〉」
と、地属性の初級魔法を詠唱破棄。鋼鉄より強固な棘が地面から生えて少女に襲いかかる。
そう。体が動かなくとも、言葉を紡げるならば活路はある。
間一髪で棘を躱しながら少女が叫ぶ。
「まさか、貴様!
、、、、、、、、、、、、、、、
身動き一つ取れない状態で私を罠
、、、、、、、
にかけたのか!」
「御名答。」
そう。口が動く時点で活路は見えた。後は確実に当てるためにギリギリまで待っていたのだが。
まさか避けられるとはね。
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