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三十分間。
俺は桜木美里に、五分で考えたでっち上げストーリーを説明し、必死に誤解を解いた。
冷たい視線に耐えながら。
実際桜木美里は相当に頭が良い。
矛盾や綻びがあってはすぐに感づかれてしまう。
曰く。
ギルドの依頼で、シルバーウルフの討伐に行ったら、襲われていたセルフィに出会った。
シルバーウルフは何とか俺が倒したが、その時偶然にも突然変異種≪イレギュラー≫に遭遇した。
属性の相性が悪く俺は窮地に陥ったが、セルフィと力を合わせて何とか倒した。
よって、“一夜を共にした”と言うのは嘘ではないが、別にいかがわしい意味では無い。
一部に真実を含んだ完全な作り話である。
五分で考えたにしては上出来だ。
誠心誠意を込めて嘘話を話し、何とか事態を無事に収められた。
途中で口を挟んでくるセルフィを必死に止める事もあった。
肝心な部分で誤解を招くような表現で口を挟まれ、こいつ、絶対に面白がっている……と思う事も多々あったが。
そして。
出来るだけ早く桜木との打ち合わせを終わらせ、失礼にならないように帰ってもらい。
俺は、改めてセルフィに相対した。
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