転機。

2/16
前へ
/95ページ
次へ
普段通りの朝だった。 特に清々しくもなく、運命なんて馬鹿げたモノの存在も感じない、ごくごく平凡な朝。 七時丁度に起床し、昨日の夕食の残りを温めて食べ、始業の30分前には教室に着いた。 「おはよう、灯川くん。」 「ああ、おはよう。桜木さん。」 と、唯一俺より早くクラスに来る女にしてクラスの委員長、桜木美里と挨拶をかわし。 因みに俺は副委員長である。 桜木に頼まれ、特に断る理由もなく引き受けた。 で、桜木と談笑しながら予習をすませて、だんだん登校して来たクラスメイトとも挨拶をかわす。 目立ち過ぎず、しかし確かに皆の中心に立つ。 それが俺が17年の人生から発見したベストな立ち位置である。 昔の俺は自分の優秀さを隠す事を知らなかった。 と、言うよりもむしろ自分が優秀だとは微塵も思っていなかった。 そのせいで、俺はクラスから孤立し、“出る杭は打たれる”という貴重な教訓を得た。 で、他人からの不興を買わないような優秀さ、それを演じた。 別に他者からの評価など気にならないが、ある程度の立ち位置は必要だしね。
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!

835人が本棚に入れています
本棚に追加