転機。

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???の視点。 まずい。大分追い詰められている。朽ちぬ身体と永久の命を授かる私とて、不死ではない。 斬られれば傷つき、殺されれば死ぬ。私達はそういうモノだ。 身体中の傷が痛む。足が笑い、視界が揺れる。 手にした大鎌を杖に、足を引きずりながら歩くが、遅々たる速度でしか歩けない。 しかし、私はこんなところで倒れる訳には………………! ちょっとした弾みに木の根につまずき、倒れてしまう。 慌てて立ち上がろうとするが、身体に力が入らない。 うう。血が足りない。 もう五日間は水しか飲んでない。 血が足りないせいか、眼の焦点も合わなくなって来ている。 このままでは本当に………………! 死への恐怖から、疲れ果てた身体から僅かな力を絞り出す。 …………何とも皮肉なモノだ。この世で最も死から遠い私が、死を恐れるとは。 何とか立ち上がるが、虫の這うような速度でしか歩けない。 くっ……後もう少しなのに………… よろよろと歩き続ける私の前に、白銀の毛の狼が一頭現われた。
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