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果たして。歩き始めてから十分もしない内に。
ボスは見つかった。
…………何故か死体で。
いや、本当に綺麗な死体だ。一見何が原因で死んだのか分からない。
毒にしては口の回りや眼の色が綺麗すぎるし、第一この辺りに毒草なんて生えていない。
病気にしてはあまり苦しんだ様子が無い。毛並みも綺麗なもんだ。
ま、悩んでいても仕方がないし、牙を切り取って帰りますか。
「あれ?」
牙を切り取る為に頭部を掴んで持ち上げたが、やけに軽い。
ボスだけあって、こいつは成人男性と同じかそれ以上の大きさがある。いくら何でも軽過ぎないか?
おや?よく見ると首筋に小さな穴が二つあるな。
これが死因か?しかしこんな穴が二つ残る様な殺し方なんて………?
後ろに気配を感じて、俺は咄嗟に振り向き。
一人の少女を見た。
「な、に?」
俺には珍しく思考停止状態。
なんでこんな辺境にこんな夜遅く女の子がいるんだ?、と言う根本的な疑問もあったけれど。
正直に言えば見惚れていた。
それ程までに少女は美しかった。
白銀の長髪に切れ長の深紅の瞳、透き通るように白い肌。何故かボロボロの服を着ているが、えもしれぬ気品がある。
威圧感すら感じるほど美しい。それはまるで。
この世のモノではないような。
そんな圧倒的な存在だった。
「お前は、一体…………」
「すまないな人間。
本来こんな事は私の本意では無いが。
貴様の血、喰らわせてもらうぞ。」
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