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それは、夕食中の出来事だった。
「なあ父さん…」
シャドウはごく自然に、いつもと何一つ変わりなく、地球が今日も正常に回っていることに疑いを持たないのと同じように、当然のごとく父に呼びかけた。
「なんだ?」
「俺ってイケメンじゃね?」
間髪入れずのいきなりの一言に、シャドウの父、シニエルは渋い顔をした。
もはや苦虫を噛み潰したどころの騒ぎではない。
「またその話か、いい加減自分に酔うのは――」
「だってさ、容姿端麗で運動神経も抜群、頭脳明晰で俺って非の打ちどころなくね?」
父の言うことに聞く耳を持たず、べらべらと喋り続けるシャドウ。
「性格が悪い」
そんな息子のたわごとを、シニエルはズバッと一言で切り捨てた。
「性格なんて二の次だろ~?だって俺イケメ」
やれやれ、とシニエルは重々しくため息をつく。
いつものことだったが、やはり息子が自分をイケメンだとアピールしている姿は見ていて心地のいいものではない。
そのため息には魂が抜け出ていそうだった。
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