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「うん…千幸さん、すごく幸せそうだった…」
俺は去年のことを思い出しては、やりきれなさに深く溜め息をついた。
『彼氏できたんですか!? いつ! どこで! お相手はっ?!!』
俺はあまりの衝撃に、身を乗り出して話題に食い付く。
『な、七瀬ちゃん、マスコミじゃないんだから落ち着いて…』
『あ…すみません…』
肩を落とす俺にくすり、と笑い掛けると、千幸さんは輝いた眼差しで遠くを見つめながら話し始めた。
『名前はね、新史っていうの。藤堂、新史』
『…新史さん…ですか?』
新史…。
どこかで聞いた名前だと思ったら、彼は愛美の従兄弟だったのだ。
愛美の会話でたびたび話題に上る新史さんは、話を聞く限りではチャラチャラしたギャル男ではなさそうだが…。
『あっはは! 新史がギャル男?』
『あ…いや、千幸さんが付き合うっていったら、そういう系の人かと思いました』
『あはは、…まぁ、アイツも地味だしね。周りからすれば、色んな意味で予想外だよね』
千幸さんは寂しそうに俯く。
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