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この当時は知らなかったのだが、由良さんとのトラブル…その原因は、実は新史さんだったという。詳しくはわからないが、昼ドラ並みに相当ドロドロした状況だったという噂だ。 『でも、新史は悪いヤツじゃないんだ。確かに恋愛に疎くて鈍感でどうしようもないやつだけど、…いいヤツだよ、ほんと』 『……そうですか』 千幸さんの表情から、新史さんがどれだけ『いいヤツ』なのか、互いにどれだけ思いやっているのかが垣間見えた気がしたして、温かいものが胸いっぱいに広がっていくのを感じた。 『…千幸さん、おめでとうございます』 『……。うん、ありがとう』 ………。 あのときの眩しい笑顔が忘れられない。 …千幸さんは、本当に笑顔が素敵な人だった。 だから、彼女がもう一度笑える日が来ることを、七瀬は心から祈ったのだった。
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