FILE.1「疑惑」

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 ◆ 俺はどうも千幸さんが死んだという実感が湧かず、皮肉なことにあれから涙は一滴も零れなかった。 ――事件の翌朝、学校に行くと、校門近くは騒然としていた。 いや、この学校に校門はないので、正確には駐車場周辺とでも言っておこうか。 とにかく、どこから嗅ぎ付けたのか、マイクやカメラを担いだジャーナリストの皆様方がご丁寧にお出迎えだ。 俺は今さら驚かない。家の近くでも同じような現象が起こっていたから。 人間の好奇というものにはつくづく呆れる。 学校に行くやいなや、生徒の大半は事件の話題で持ちきりだった。 しかし俺たちは一切その話題には触れず、いつも通りくだらないやり取りをしていた。 俺らのメンバーには、被害者である新史さんのいとこ――愛美がいる。 たぶん皆もそのことを気遣って、わざと話題を避けたのだろう。 俺も、事件のことを蒸し返されなくてほっとした。 .
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