FILE.1「疑惑」

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「安西さん、スポーツやってるんですか?」 「へ?」 唐突な質問に、思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。 中年男性の視線の先には、茶だんすの上に飾られたメダルやトロフィーなどがあった。 「あぁ……フェンシングをやってます」 「へぇ、フェンシング! お金持ちなんですねぇ」 「いいえ、道具はぜんぶ町が貸してくれるので、お金といっても大会の交通費くらいしか……」 「あぁ、そうなんですか。やっぱり雛桜っていいなぁ。海外とか行ったことあるの?」 「一度だけ……ドイツに……」 「ドイツぅ?! はぁ~、すごいなぁ……」 「私は大会には出られなかったんですけど、先輩が選手に選ばれたので、部員は応援に行ったんです」 「フェンシング部ってあるんだ。へぇー」 雛桜はやっぱりいいなぁと唸る中年男性。 「部員、少ないですけどね」と、俺は少しだけ肩をすくめた。 .
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