227人が本棚に入れています
本棚に追加
「安西さん、スポーツやってるんですか?」
「へ?」
唐突な質問に、思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。
中年男性の視線の先には、茶だんすの上に飾られたメダルやトロフィーなどがあった。
「あぁ……フェンシングをやってます」
「へぇ、フェンシング! お金持ちなんですねぇ」
「いいえ、道具はぜんぶ町が貸してくれるので、お金といっても大会の交通費くらいしか……」
「あぁ、そうなんですか。やっぱり雛桜っていいなぁ。海外とか行ったことあるの?」
「一度だけ……ドイツに……」
「ドイツぅ?! はぁ~、すごいなぁ……」
「私は大会には出られなかったんですけど、先輩が選手に選ばれたので、部員は応援に行ったんです」
「フェンシング部ってあるんだ。へぇー」
雛桜はやっぱりいいなぁと唸る中年男性。
「部員、少ないですけどね」と、俺は少しだけ肩をすくめた。
.
最初のコメントを投稿しよう!