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「藤堂くんもフェンシング部だったの? 藤堂、新史くん」
「いえ、新史さんは違います」
「何部だったのかな」
「さぁ……」
「仁藤さんは?」
「バレー部でした。もう引退しましたけど……」
「二人とも、3年生だったもんね」
「…………」
風が吹くように、ふと、千幸さんの姿が脳裏に浮かんだ。
楽しそうに話す千幸さん。学校ですれ違った千幸さん。笑ってる顔も、泣いてる顔も……。
「……どうかしましたか?」
中年の男が顔を覗く。……視線が鋭い。
俺はなんでもない、と慌てて首を振って、千幸さんの残像を掻き消した。
やはり警察には、遺族のこととか、悲しんでる人のこととか、関係ないのだろうか……。
「安西さん、二人とは仲が良かったんですか?」
「えっと……、千幸さんとは小さい頃からよく遊んでもらってました」
「藤堂くんとは?」
「あまり話したことはないです。ただ、千幸さんや愛美から名前を聞く程度で……」
「仁藤さんから?」
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