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直後、一瞬にして空気が変わったような気がした。
中年の男性はうんうんと頷き、若い男性もさっきと同じようにただメモを取っているだけなのだが、何か違う。
(あ……)
…………疑われてるんだ、俺。
「不審な物音とかしませんでしたか? 変わったこととか」
「いえ、…………」
いっそう鋭くなった眼光を向けられ、思わず目を逸らす。
駄目だ、動揺して明らかに歯切れが悪くなった。
やましいことなんて何もしてないんだから堂々とするべきなんだ。
なのに疑われていると分かった途端、目の前の男性とどう向き合ったらいいのか分からなくなった。
こんなんじゃ、もっと疑われるのに……!
ぐるぐると思考が巡って、目が回りそうになる。
(――落ち着け、落ち着け)
新史さんとはあまり面識がなかったけど、……いや、だからこそ、俺を疑うのは見当違いだ。
それに、俺と千幸さんは仲が良いことで近所でも有名だったはず。
……じゃあ、なんで?
俺の『何を』疑ってるの?
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