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「――……、――さん、安西さん!」
「はいっ?!」
俺は驚いて間抜けな声をあげる。
目の前には、困った顔で俺の肩を叩く中年の男性がいた。その後ろには、眉をひそめた若い男性。
どうやら、考え事をしているうちにすっかり話を聞き逃してしまったらしい。
……俺の悪い癖だ。
「安西さんも疲れているようなので、今日はここらでお暇します」
「あ……すみませんでした……」
恥ずかしくて申し訳なくて、俺はひたすら頭を下げた。
「いえ、こちらこそ。長々と有難うございました」
中年の男性、続いて若い男性が立ち上がると、「お邪魔しました」と会釈をする。俺も会釈を返すと、玄関の引き戸を閉めた。
「…………はぁ」
俺は玄関に背を向けると、大きく息を吐いた。
(やっと終わった)
緊張した……。手汗もかいている。
「ちょっと横になろうかな……」
疲れを感じた俺は自室に戻ろうとした。――その時だった。
「でも、あの子はまだ子供ですよ?!」
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