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その翌日と翌々日は違う刑事が来て、任意同行を求められた。
少し怖かったが、無実を証明するには行く必要があると覚悟した。
しかし母はそれを許さなかった。
「七瀬は何もやっていません。帰ってください」
「ですからお母さん、七瀬さんが無実だということを確かめるためにも必要なことなんです」
「じゃあ、あなたたちは七瀬が犯人じゃないって、無実だって、本当に思ってるんですか?」
「もちろん――」
「嘘つかないでください。私はこれ以上、あの子に負担を掛けたくないんです。七瀬が千幸ちゃんのようになってもいいんですか? あなたたちの責任問題になるんですよ」
いつも静かな母が凄むと、刑事はため息をついて、「また後日うかがいます」と言い残して去っていった。
「お母さん、俺行くよ。任意同行」
俺は台所に戻っていく母の背中に声を掛けた。
「だめ」
即答だ。
「なんで?」
「七瀬」
母は背を向けたまま呟いた。
「私はあんたの味方だからね。信じてるからね」
その言葉の意味を、俺はまだ知らない。
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