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◆
事件から4日が過ぎた。
――出ちまったんだよ、指紋が。
「……」
あの刑事たちの会話が頭から離れない。
だって有り得ないのだ。
俺の家から包丁なんて一本もなくなっていない。俺専用の包丁なんかないから、ぜんぶの包丁に俺以外の家族の指紋もついているはずなのだ。
ずっと考えてるけど、わからない。
俺が精一杯考えた中で一番有力なのは、『実はあれは俺の指紋ではなく、形のよく似た誰かの指紋で、それと俺の指紋を間違えたのではないか』というものだった。
それも有り得ないとは言い切れないけど、今は2009年だぞ。21世紀なんだ。警察の機械がそんな簡単に間違うはずがない。
でも俺はやってないわけだから、結局は機械が間違ったということに……。
「あーもう分かんない!」
俺はくしゃくしゃと頭を掻きむしる。
考えたってしょうがないや! 俺はなにもやってないんだし、堂々としてればいいんだ、堂々と!
俺は自分に言い聞かせて、朝日の差し込む廊下を闊歩した。
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