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実波はどすの利いた声で、そのアヤと呼ばれた長髪の少女を睨み付ける。詩織もまた、彼女らに対する嫌悪を露にしている。
しかも、アヤ――姫宮アヤは女子のボス的存在だ。
親は市議会議員。
知り合いにも有名人や政治家など、権力をもった人物が多いらしい。
だから町民も姫宮家のことが『恐ろしくて』、姫宮の者とは距離を置いている。それは子供の間でも同じだった。
だから、普通ならアヤを見ただけで押し黙ってしまうところだが、どういうわけか詩織と実波の二人は、怯えるどころかあからさまに嫌悪を満面にたたえる。
それはただ単に度胸があるからなのか、それとも……。
「くすくす、知らないの?」
「だから、どういうことかって聞いてるんだけど。大体、ウチらの誰が犯罪者だっていうの? アタマ大丈夫?」
詩織が馬鹿にするように鼻で笑う。
一瞬、アヤの顔がぴくりと引きつったが、またすぐに憎たらしい薄笑いを浮かべた。
「へぇ、知らないんだ。じゃあ教えてあげる」
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