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「そこにいる安西七瀬よ!」
アヤの一言に、野次馬がさらにざわつく。
犯罪者? 俺が? なんで?!
どこがどうなったら俺が犯罪者になるのか。
俺は前科もないし、確かに小さい頃はよく男子と喧嘩したけど、でも記憶がある限りは警察にお世話になるようなことは断じてないっ!
(なのに、なんでアヤはそんな……)
頭に浮かんだ疑問に、俺はひとつだけ思い当たる節があった。
いや……でも、まさか――!
「ちがっ――あれは、」
俺が否定の言葉を口にする前に、その横をさっと風が掠める。
驚いて振り向くと、うしろに座っていた実波がいつの間にか、俺の横を通りすぎてつかつかとアヤに歩み寄っていた。
詩織たちが呼び止めようとするが、実波の顔を見て言葉を飲み込む。
「黙って聞いてりゃテメェ……、寝言は寝てから言いやがれッ!!」
「な――っ、ぐ!」
実波はアヤの胸倉を掴み上げると、噛み付かんばかりの勢いで怒鳴り立てた。
アヤは突然のことに身構えることもできず、鋭い眼光で射すくめられて、ただ固まる。
「――寝言じゃないよ」
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