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「な…七瀬…!」
はぁはぁと息を切らせて駆け寄ってきたのは愛美たちだった。
俺は泣き顔を見られまいと、わざと顔を背けて窓の外を眺めているふりをした。
「…ちぇ、うまく振り切ったと思ったんだけどなぁ」
「はは…俺ら何年トモダチやってると思ってんだよ…っはぁ……」
…みんなの様子を見ると、あれから相当、校舎の中を走って探し回ってくれたようだ。
余計なお世話と言いたいところだが、…いつも薄情なこいつらが俺を探すために駆け回ってくれたのが少しだけむずがゆくて、自然と照れ笑いが出てしまった。
でも顔を背けているから、みんなにはその表情は見えない。
「なんかごめんね、だいぶ迷惑掛けちゃったみたいで」
「ああ、大迷惑だよ。もうすぐ朝会だっていうのにさ」
愛美が眼鏡をくいっと直しながらわざとらしく声を張り上げると、みんなもそれにつられて笑ったり、そういえばもう朝だっけ、なんて訳の分からないボケをかましたりしている。
そうすることで、こいつらは、俺が不安や悲しみに呑まれないようにしてくれているんだ。
そんな気遣いが嬉しくて恥ずかしくて…。
………でも。
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