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「痛ってぇ!? もう少し人に優しくできんのかね、七瀬」 蹴られた足を大袈裟に庇うと、馬鹿は俺を睨み付ける。 「しょうがないじゃん、そういう性分なんだからさ」 俺――安西七瀬(あんざい ななせ)は爽やかな笑みを浮かべながら親指をぐっ、と立ててみせる。 「それを直せと言ってるのがわからんかね…」 ご覧の通り、俺は何よりも先に手足が出てしまうタイプだ。 それに、直せるものならとっくに直している。ここは大目に『活発』と言ってもらいたいところだ。 そんな俺に、馬鹿…もとい柊木有璃(ひいらぎ ゆうり)はやれやれ、と呆れ顔で溜息をつく。 有璃は、一言で言うと『馬鹿』である。救いようのない馬鹿である。 具体的に言うと、変態で頑固で裏表の激しいやつだ。そして訳の分からない人生論…『有璃論』を持っている。 俺の友人…いや、サンドバックとでも言っておこうか。 「まあまあ、二人とも落ち着いて…」
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