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「ねぇ…俺の話聞いてた? みんなに迷惑掛けることになるんだよ?! それだけじゃない、きっとみんなの家族にまで――」
「七瀬こそ、そうでしょ。迷惑掛け合えるのは友達の特権――だからもっと頼っていいんだよって言ったの、ちゃんと聞いてた?」
「っ…でも……」
納得がいかない俺は佳音に反論しようとするが、それを有璃が遮った。
「じゃあ決を採ろうかね。――七瀬を信じられないやつ、自分への悪影響が恐いやつは10数える間に教室へ戻れ。…これは現実問題だよ。保身を第一に考えるのは今の状況では当然だし、必要なことだと思う。……だから、戻ったやつを責めたりはしない。言っておくけど、綺麗事や偽善、同情ならいらないよ。…よく考えてね」
有璃はそう言ってみんなを見回すと、1、2…と、ゆっくり数を数えていった。
……俺は再びみんなに背を向ける。
「4、5、」
…誰かが去っていく姿を見たくなかった。どんな顔で、いくつ数えたときに、どんな足取りで去っていくのか。
…見たくない。
見るのは有璃が数え終わった後だ。そのときに誰もいなくなっても、…大丈夫。耐えられる。耐えられる――
「8、9、――10」
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