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………。
俺は一度だけ深く静かに息を吐くと、ゆっくり振り返った。
「…………あ……」
………。
そこには。
…みんながいた。
「なんで…みんな……」
「さぁ…なんでだろうね? みんなお人好しってことかな」
「ま、実ぃちゃんだけにカッコつけさせるわけにはいかないしね~?」
「…有璃ちゃんも充分カッコつけてたと思うけど」
「君たちも、ここに躊躇いもなく残ってる時点で充分カッコつけてると思うんだけどなぁ」
…バカ野郎。こいつらは本当に大バカ野郎だ。
――そのとき、校内にチャイムが鳴り響く。
「…あれ? これ予鈴じゃなくて、本鈴じゃない?!」
「うっわ最悪、遅刻じゃんッ! ――走るよ!!」
一斉に駆け出すみんな。…俺はその切り替えの早さに少しだけ呆れながら、…その頼もしい背中を追いかけた。
…ふと、実波が足を止める。隣を走っていた詩織がそれに気付き、彼女もまた足を止めた。
実波は少しだけ言葉に迷ってから、詩織に向き直って毅然とした眼差しで言った。
「俺はもう、二度と間違えない。…絶対に」
「……」
詩織は無言で頷く。
「…行こう。遅刻だよ、『実波』」
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