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視界がだんだんと暗くなるのに気付き空を見上げると、さっきまでの暖かな日差しは一変、風に押されて西から来た雲のせいで陰り出していた。
せっかくのいい天気だったのに…と少しだけ落胆する。
やはり冬の晴れ間というのは一時的なものでしかないのか。生憎、そう長くは続かないものだ。すぐにまた雲って、…明日には冷たい雪が降るだろう。
世界に鮮やかな色がついて温かい陽が差し込むのは、まだまだ先…ってことか。
(…なに感傷的になってるんだろう)
とりあえず自室に戻ろうとして振り返ると、玄関の靴箱の上に見覚えのある音楽プレイヤーがあるのを見つけた。
(これはたぶん…有璃のものだよな?)
忘れ物? だとしたら早く届けないとな。
俺は母に断ってから、まだそう遠くには行っていないだろう有璃たちを追い掛けることにした。
………知らぬが仏、という諺があるように。
今思えば、有璃が忘れ物さえしなければ…いや、俺がちょっとした好奇心で盗み聞きなんてしなければ。…そうすれば俺は、もう少しだけ長く仲間を信じて、幸せに過ごすことができたのかもしれない。そしてまた違う未来を選べたのかもしれない…。
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