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でもそれを後悔するのは、まだ少し先の話になる。
◆
家を出て数分も経ってないだろう。そんなとき、近所のコンビニから見覚えのある人影が二つ、店から出てくるのが見えた。…愛美と有璃だ。
…ふと、俺のなかでいたずら心がくすぐる。
(ちょっと脅かしてやろうかな)
俺はふてぶてしい笑みを浮かべながら、乗っていた自転車ごと店の陰に隠れた。
二人が停めておいた自転車に乗ろうと近付いてきたところを不意討ち! …という魂胆である。
俺は静かに目を閉じると、息を深く吐いて高揚する気持ちを静める。
…だんだんと二人の気配が近付いてきて、それが話し声と足音という確実なものに変わる。俺は神経を集中させると、絶好と思われるタイミングで飛び出――
「…やっぱり、あいつだった」
その言葉に、俺は踏み出しかけた足をぴたりと止めた。
…二人の声色がどこか違う。わずかな違和感に、俺は脅かすタイミングを見送ることにした。
…にしても、また盗み聞きか。刑事が来たときもそうだった。指紋の件を事前に耳に入れることができて運が良かったのか悪かったのかはわからないが…。
「じゃあ…アンザイが…?」
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