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「……あぁ」
「ならばこれを持って行け、お前の親父も使っていたものだ。」
アステムルは手に持っていた鈍器のようなものをケビンに差し出した。
暗がりだから良く見えなかったがこれは剣だ。それも初めて見るくらい巨大な。
ケビンは手を出して受け取る。
「ッ!!!」
その剣はとてつもない重さだった。
だが、ケビンは意地でその大剣を背中に背負う。
まるでクマ一頭背負ってるかのような重量が足腰を襲う。
だが、そんなことよりケビンは自分の祖父に聞きたいことがあった。
「……じっちゃん。」
「なんだ?」
「……止めないのか?俺、もう帰ってこないかもしれないんだぞ?」
「……止めたって無駄だろう?お前の親父もそうだった。俺は必死で止めたのに……ある日、朝起こしに行ったらベッドはもぬけのからだったよ。」
「え?俺の親父は漁で死んだって……」
「そう言えば、同じ道を歩むことはないと思ってたんだけどな。……お前の親父は冒険者だった。ある日突然、いなくなったと思ったら。数年後に血まみれで……その剣とお前を抱えてな。力尽きたよ。」
ケビンは自分の頭の情報を整理できなくなっていた。
自分の父は冒険者?剣が形見?どうやら神様を俺のいままでの人生を根本からぶっ壊す気らしい。
だが、ケビンはむしろ神に感謝していた。自分は漁師として縛られる必要はない。父に倣って冒険をしてもいいんだ。
その気持ちが、彼の未練を吹き飛ばした。
「じゃぁ……じっちゃん!行ってきます!」
「……行って来い!馬鹿孫!」
そうして、こんな突然の事件で彼の冒険は始った。
実は、この旅の始まりは『来るべくして来たもの』であったのだが……。
そのことを彼が知るのはずっとずっと後の話である。
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