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ケビンがゆっくりとドアを開いた直後だった。
中から彼のじいちゃんであるガーテール・アステムルの……ドロップキックが飛んできた。
モロにうけたケビンは激しく吹っ飛び、倒れた。
すると、一瞬の間を置くこともなくアステムルはケビンの上に馬乗り状態になり正義の鉄拳をかます。
「ちょっ!じっちゃん!タンマ!」
「うるせぇ、馬鹿孫め!今日は!朝から!漁だって!いったじゃねぇか!」
どうやらケビンは今日の朝も漁をサボったらしい。
恐らく、じいさんより早く起きて速攻で樹海に繰り出したのだろう。
そうだとしたら120%ケビンが悪いのだが、目の前の光景は苦笑いしか漏れないレベルだった。
無抵抗の若者とその若者に馬乗りになって鉄拳を何発もかますじいさん。
これほどシュールな光景が他にあるだろうか?
「漁師の孫は漁師って……なんのロマンもねぇじゃんか!」
「お前の人生にロマンなどいるか!お前の死んだ両親から絶対安全に育てるように言われたんじゃ!」
「漁師って十分危険じゃねえか!」
「グッ……!……祖父にタメ口使ってんじゃねえ!」
「いまさらかよ!?」
――――そんな感じで『正義』を掲げた理不尽な暴力を受けたケビン。
結局、その晩まで二人とも口をきくことがなかった。
じいちゃんと孫、二人暮らしで一回も会話がないのは普通の家庭では珍しいことだが、この二人に関してはこれが日常茶飯事となっている。
そして、ケビンは一人、布団に入ると考えた。
「(俺は……絶対、この村を……いや、星を出て……大冒険に出てやるんだ……)」
この、持つ夢と環境とがマッチしない不完全燃焼青年ケビン・ジョーカー。
そんな彼の夢はもうすぐ叶うことになる。
人の人生の転機とは……案外簡単に来てしまうものなのである
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