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「水の如くあれ」
隣で書物を読んでいた半兵衛がふと呟いた。
「なんだそれは」
先日の戦処理に追われていた官兵衛が、筆を休めて寝転んでいる半兵衛のほうを向いた。
「ん?俺の好きな言葉『身は毀誉褒貶(きよほうへん)の間にあるも、心は水の如く清し』ってね。これって俺達にあてはまらない?」
半兵衛の口が弧を描く。
「何故だ」
官兵衛は端的に問う。この男は言葉が短く棘があるようにみえるだけでなく、肌は白色で血の気がなく、左頬が焼け爛れており、鷹のような鋭い目が本人が意識しなくても、人を遠ざけてしまう。一方半兵衛はその真逆であり、血色のある肌に、烏の羽のような黒髪に猫のように大きな双眸は傍目から見ると、どうみても子供である。
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