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会議は秀吉の一括により終結した。
会議が終わり、秀吉が退出すると外には官兵衛が待っていた。
「秀吉様、お疲れ様にございます。会議は三法師様が跡目を継ぐことで、解決しましたな」
三法師を跡目にすることを提案したのは、実は官兵衛であった。
「あっそうじゃの・・・」
秀吉が少し目線を外した。
「まぁ、こっからが本腰じゃな。期待しとるぞ」
秀吉はいつもの笑顔を作ると、すたすたと廊下を去って行った。
官兵衛は、秀吉が一瞬目線を外したことに違和感を感じた。
この時すでに秀吉は官兵衛に対し、疑念を抱きつつあった。中国攻めの際の兵糧攻め、備中高松城の水攻め、中国大返しを実行したあの一言。そして、今回の三法師の推挙。どれも、官兵衛の頭の中でうまく作られた計算であった。
『こやつの頭の中では、わしに天下をとらせ、如何に自分が奪うのか知略を働かせているのでは』
そう思うと、主君に謀反を起こした明智光秀と黒田官兵衛の姿が重なった。官兵衛の知らぬ所で秀吉の官兵衛への疑惑は深まるばかりであった。
しかし、この時の官兵衛は秀吉の心境を知ることはなかった。
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