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路上でタバコを吸う男。ゆっくりと歩きはじめた。スーツに革靴。背は高く、骨格もしっかりしている。仕事帰りのサラリーマンには見えない。 男の目線の先にはヨーコが乗り込んだタクシーがあった。 男は慌てる様子もなく歩き続けた。そして100mほど歩いたところに一台の黒いセダンが、ハザードランプをつけて止まっていた。車のトランクには太いアンテナが一本立っている。無線のアンテナだ。男はタバコを投げ捨てて車の助手席に乗り込んだ。運転席には若い男が座っている。 「どうします、榎本さん?」 「ああ、そうだなぁ。相原の方はどうなった?」 「はい、現場付近で待機させてます。」 「感付かれてないだろうな?」 「報告は受けてませんが、おそらく大丈夫かと…。」 「予測で物を言うな。わかんねぇなら、わかんねぇって言えばいい。」 「すいません…。」 「謝んなくていい。はい、でいいだろ?まあいい。場所はわかってんのか?」 「はいっ。すぐに向かいますか?」 「ああ。急げよ。」
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