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細い路地。時刻は午後10時を過ぎた頃。人通りはほとんどない閑静な住宅地。
そこにゆっくりと停車する一台のタクシー。
周りを気にしながらヨーコがタクシーを降りた。ヨーコはタバコに火をつけた。タクシーが出るのを待っている。
用心深い。人一倍臆病なのかも知れない。自分を落ち着かせようとタバコに意識を集中する。
タクシーが出た。ヨーコはずっと目で追った。暗闇に光るウィンカー。ゆっくりとその光が流れてゆく。
辺りには静けさが戻った。
静寂。その空気がヨーコは好きだった。緊張の中で生きる彼女にとって唯一の安らぎなのかもしれない。
タバコを投げ捨て、ヨーコは再び緊張に身を預ける。周りの気配に気を配りながら歩き始める。
歩くこと10分。やっとアパートの前にたどり着いた。
ゆっくりとカギを回し、部屋へ入る。ヨーコはベッドに近づき、静かに寝息をたてて眠るココロを見つめる。
涙。高ぶる感情が鼻を突き抜けて涙腺を刺激した。
「ごめんね。こんな母さんで…。もう終わりだからね…。これから生まれ変わるから…。許してね、ココロ。」
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