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コージの手は震えていた。アパート前の壁に隠れる二人の男。スラックスに上はワイシャツにジャンパー。いかにも警察が私服で仕事をしていますと言わんばかりの格好であった。 まずい。つけられていた。落ち着け、冷静になれ、考えろ…。まだ来る気配はない。多少の時間はあるはずだ。とにかく着替えよう。最小限の荷物をまとめて…。 コージはジーンズにスニーカー、トレーナーと動きやすい服装になる。そして、アルミケースの中身を確認した。 金が詰まっていた。新札ではない。ある程度整理はされているが、いくらあるのかは一見してわからない。 詐欺師。彼の職業だ。 弁護士を語り、離婚問題を得意とする。それなりに法律も学んだ。知能犯。 雨戸には小さな穴。息を潜め、外の様子を伺う。鼓動が速くなる。のどは渇いて息苦しい。手には汗がにじんでくる。頭が回らない。逃走経路。あるのか? 落ち着け、きっとある。考えろ。捕まる訳にはいかない。考えるんだ。ギリギリまで。 コージの目線の先に新たに二つの影が現れた。 榎本。 ヤバい。時間がない。 あるはず、あるはず…。 見つけたっ!
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