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店を後にしたヨーコは、人通りの多い道を選んで歩いていた。
つけられている。ヨーコは直感でそう思った。
ヨーコの感はいつも鋭かった。勉強は出来る方ではない。しかし頭の回転は非常に早い。自分でも自覚している。冷静な時は…。感情が高ぶると、その影は一気に消え失せる。精密なコンピュータにウィルスが侵入してきたように。
だからヨーコは常に冷静を保つ努力をしている。
ヨーコは店を出た後に背後に違和感を感じていた。いや、正確にいうと店にいた時から気付いていた。
何も知らない素振りで人混みを歩く。決して早足にならないように気を配りながら。
ヨーコは大通りに出ていた。4車線の比較的交通量の多い道路。駅から近いため、タクシーも多い。ヨーコはタイミングよくタクシーを止めた。後続にはタクシーの姿は見えない。まさしく尾行を巻くにはベストのタイミング。それでも気を抜かず、タクシーに乗り込み行き先を告げた。
「とりあえず真っ直ぐ。そこから先は、また指示するから。」
ヨーコは初めて後ろを確認した。誰も追って来ない。気のせいだったのかも知れない。それでもいい。安全に行かなければ…。
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