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蓮が出た後、速水は携帯を取り出し、いそいそと何処かへ電話をかけ始めた。
掛けた相手は4回のコールで電話に出た。
「もしもし、速水です。
今、大丈夫ですか?」
『ああ。』
と短く答えたその声は、相田の元・相棒、そしてエリート街道まっしぐらの矢島だった。
「さっき蓮先輩、課長に呼び出されて使われてない倉庫の部屋に行ったみたいなんです。…なんか怪しいでしょう?」
飼い主に獲物を取ってきた犬のように嬉しげに速水は報告する。
この男にしたのは間違いだったかな…。
と矢島は思いながらも、明るい声でそれに答えるのだった。
「報告ありがとう。これからも頼むよ。」
“頼む”という言葉が速水をくすぐったらしい。
『はい!』
と元気よく返事をして電話を切った。
携帯を胸ポケットに仕舞った矢島は、机に両ひじをつき、頬杖をついて考える。
課長は蓮を可愛がってるからな…。
余計なことをされても困る…。
矢島がここまで蓮を敵視するのには、新しい脅威として怯えている面があるのだ。
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